「インクルーシブHTML+CSS&JavaScript」を献本していただきました

今月発売される「インクルーシブHTML+CSS&JavaScript」という本を献本していただきました。一読したので、自分が面白いと感じた点をいくつか紹介しておきたいと思います。

インクルーシブ HTML + CSS & JavaScriptの表紙https://www.amazon.co.jp/dp/4862463878/

訳註が濃い

表紙に「監訳者注を大幅に加筆」と書かれている通り、この本の非常に多くの訳注があります。また、単なる翻訳の補足の領域を超えて、幅広い観点から原著の指摘を行なっています。

特に素晴らしかったのは、原著の考慮していない点や実装の問題点を多数指摘していることです。また、原著が書かれたあとで策定された仕様についても都度丁寧に解説されています。例えば、第4章「ブログ記事」では、「単一のページで複数の<main>要素を使ったり…」という原著の記述について、以下のような訳註がついています。

1つの文書に複数のmainを置くことの是非については、複数の立場があります。原著が出版された2016年10月の時点では、W3のHTMLの5.0勧告には、1つのドキュメント内で複数のmain要素を使ってはならないという趣旨の記述がありました。しかし、その後のHTML5.1では...

全体として、原著者と翻訳者、複数の先生から指導を受けているような気持ちで読み進めることができ、説得力の高い印象を受けました。

単純なパターンカタログではない

この本の副題には「多様なユーザニーズに応えるフロントエンドデザインパターン」とあります。確かに、ブログ記事、ナビゲーション、ボタンなど、よくあるパターンについてインクルーシブな実装方法が書かれています。

しかしこの本は、パターンの解となる実装だけを載せているわけではなく、それぞれの実装の背後にある考え方や理由の解説に多くの紙面を割いています。例えば、ある実装を行うことで、スクリーンリーダーにはこう読まれるとか、CSSJavaScriptが読み込まれていない環境ではフォールバックして使うことができる、などといったことです。再現性のある視点が多いので、書籍で解説されていないUIパーツなどを設計する際にも応用できる内容だと思います。

広範な技術領域をカバーしている

翻訳者の前著「コーディングWebアクセシビリティ」では、主にWAI-ARIAやスクリーンリーダーの対応に関して詳しく解説がなされていました。この本は、それらの技術もおさえつつ、より広くHTMLやCSSJavaScriptについて解説されています。

自分は仕事柄、アクセシブルなコーディング方法を初学者に学んでもらう機会がしばしばありますが、まずはこの本を読んでもらったあとで、より深くWAI-ARIAについて理解するために、コーディングWebアクセシビリティを読んでもらう、といった使い方ができそうだなと感じました。

こんな人におすすめかも

アクセシビリティは重要そう!でもどうやって実装したらいいかはよくわからない」といった方には是非おすすめしたいなと思いました。また、普段からアクセシビリティに従事している方にも少なからず新しい発見がある本だと思います。